新寄宿舎の完成

高等科寄宿舎の新築決定後、大正十四年九月から昭和二年四月まで、池田俊彦教授を英米独仏の諸国に派遣して、オックスフォードやケンブリッジをはじめ、各地の学生寮の設備と制度の調査研究をなさしめた。
 その一方、権藤宮内省技師の手によって設計がすすめられ、昭和元年十二月、高等科寄宿舎建築工事に着手した。鉄筋コンクリート造りの南欧風の建物群から成る寮舎が完成したのは、昭和三年三月三十日であった。
 この高等科の寮は、本館・四棟の寮舎・舎監のための官舎などで構成され、延べ健坪は約八五〇坪(約二、八〇〇坪平方㍍)、建築費は約二五万円であった。高等学校の寮としては画期的な設備と近代的な外観をもった建物で、南に急傾斜した台地上に建てられた白亜の姿は、四囲の緑とよく調和して美しく、現在でも目白?高田馬場間の山手線の車窓から見ることができる。本館には、一階に事務室・食堂・配膳室・談話室・娯楽室など、二階に院長室・舎監室・舎監寝室・舎監書斎・応接室・会議室・読書室など、地階に炊事場・浴室・暖房室などが配置されていた。第一寮から第四寮までの各寮舎は学生の個室を主とするもので、第二寮には皇族学生の個室と浴室、随員室が加えて設けられていた。収容定員はすべてで五〇名とされた。これらの建物完成後、同年四月二十六日には寄宿舎構内にテニスコート二面が完成した。

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